俺を監禁していた妹が、この世界のどこかに潜んでいる――。
高校卒業から5年間、妹に監禁されていた俺は、やっとの思いで逃げ出した矢先にトラックに轢かれ、異世界に転生。悪魔のごとき妹からようやく解放された……。
新しい、自由な世界での名はジャック。貴族の一人息子として、愛に溢れた両親と優しいメイドのアネリに囲まれ、幸せに満ちた、新たな人生が始まった――はずだった。
そう、一緒に死んだ妹も、この世界に転生しているのだ。名前も容姿も変えたあいつが、どこに潜んでいるかはわからない。だが、今の俺には神様にもらった、世界最強クラスの力がある。
この能力であいつを退け、俺は今度こそ、俺の幸せと、周りの人たちを守ってみせる――!
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紙城境介さんの作品『転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?』
――タイトルからして逃げ場なし。これは問題作であり、傑作です。
まず言わせてください。この作品、ただごとじゃありません。
タイトルを見た瞬間、思わず笑ってしまったあなた。その直感、正解です。でも、読み進めるうちに、笑いはゾワリとした震えに変わるはず。
そう、本作は感情を激しく揺さぶる“異色の転生ダークファンタジー”。
怖い? グロい? いいえ、違います。
ページをめくるたびに襲ってくるのは、言葉にならない不安と、背筋を這うような戦慄。
ヤンデレというジャンルに、まだ“余白”があることをこの物語は証明してくれます。
では、読者をどこまでも引きずり込む本作の注目ポイントをご紹介しましょう。

ポイント①:才能という名の“歪み”

物語の主人公ジャックは、精霊魔法というこの世界でも限られた存在にのみ扱える力を手にします。
一見、王道ファンタジーな導入ですが、安心して読んでいられるのはほんのわずか。
この“才能”が祝福ではなく呪いへと変わるその瞬間、あなたは物語の闇に片足を突っ込むことになります。
ポイント②:「兄さん」が逃げられない理由
タイトルにもある“兄さん”ことジャックと、彼の妹。
そう、この物語のカギを握るのは妹という存在。
彼女はヒロインではありません。けれど、ただの脇役でもありません。
例えるなら――「世界の終わりそのもの」。
その狂気じみた執着と愛情の歪みは、読者の心に深い爪痕を残します。
愛が深すぎると、世界はこうも簡単に壊れるのか――と。
ポイント③:ヒロインという“救い”

物語における唯一の光、それがヒロインの存在。
彼女は読者にとってのオアシスであり、物語の緊張感を一瞬だけ緩和してくれる安らぎ。
けれどそのやさしさすら、どこか儚くて切ない。
終盤、彼女の行動がどれほど読者の心を締め付けるか、ぜひ体感してほしい。
ポイント④:世界が、壊れていく音
物語はやがて、“個人の執着”という枠を超えて、世界を巻き込んだ闘いへと突入します。
正義も悪も曖昧になる中、読者は何を信じ、どこへ希望を託せばいいのか。
物語のスケール感が一気に拡張される後半は、まさに圧巻です。
ポイント⑤:そして、終着点へ――
もうすでに、あなたの中にこの物語の断片が住み着いているかもしれません。
それでも言わせてください。ここからが本当の地獄です。
けれど、だからこそ目を背けられない。
どこまでも深く、どこまでも暗いその道を、それでも希望を信じて歩む登場人物たち。
ラストに込められた願いに、きっとあなたも心を奪われることでしょう。
おわりに

「転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?」
タイトルだけでスルーしてしまうには、あまりにもったいない。
この作品には、人の心の奥底にある“業”と、それを乗り越えようとする“祈り”が込められています。
読み終わったあと、世界の見え方が少し変わるかもしれません。
無料で読める奇跡のような一作。ぜひ、一度ページを開いてみてください。
きっと、忘れられない物語になります。