巻数の多さや重厚な絵柄に圧倒されて、なかなか手が伸びない――そんな方にこそ届けたい、『キングダム』の魅力を章ごとに丁寧に解説するシリーズです。
登場人物の成長や仲間との絆、戦場に生きる人々の覚悟や戦略の妙まで、物語の熱量をそのままに、5分で読めるガイドとしてまとめています。
未読の方にも、途中で止まってしまった方にも、改めて読み進めたくなるきっかけになれば嬉しいです。
それでは始めます。
5分でわかるキングダム|第1章:王弟反乱編(1〜5巻)
中国・春秋戦国時代。
戦乱が日常となったこの世界で、信と漂という二人の少年は「天下の大将軍になる」という夢を掲げ、毎日剣を振るっていた。二人は下僕の身分ながらも、己の腕ひとつで未来を切り開こうと日々を懸命に生きていた。
ある日、王宮からの使者が現れ、漂だけを連れていく。信には何も告げられずに別れたその日を境に、二人の運命は大きく分かれた。そして、数日後。血まみれになった漂が、信のもとへ戻ってくる。震える手で渡されたのは、一枚の地図。そのまま言葉を交わすことなく、漂は息絶えた。
信は、地図に示された場所へと走る。そこで出会ったのが――漂とうり二つの少年、嬴政。
彼は秦の王だった。
政は語る。自分は異母兄の成蟜に王位を奪われ、命を狙われ逃げている身だと。そして、漂はその政の“影武者”として命を落としたのだと。
怒りに震えた信は、政に剣を向ける。だが、政が語る「中華統一」という壮大な夢に、信はただの怒りでは済まされない何かを感じる。漂が命を賭けて守ろうとした相手が、ただの王ではなく「戦のない国を作る」という志を持つ男だった――そう知ったとき、信の中で何かが変わり始める。
やがて信は、政とともに王都奪還の戦いへと足を踏み入れることになる。将軍・壁、山民族を率いる楊端和との共闘。信は戦の中で、「下僕でも戦える」「夢は口にするだけじゃなく、掴み取るものだ」と体で覚えていく。
そして咸陽。信と政たちは、王都を支配する成蟜と最後の戦いに臨む。信は叫ぶ。「下僕でもやれるってことを、俺が証明する!」と。
政は王として玉座に戻り、信は漂の想いを胸に「本物の大将軍」になる道を歩み始める。
ここから、信と政――後の始皇帝の物語が、本当の意味で動き出す。
たった5巻分でありながら、この序章には“すべての始まり”が詰まっている。
信の成長、漂の死、政との出会い。どこを切り取っても熱く、どこまでも骨太な導入だ。