マンガ:5分でわかる「キングダム」

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5分でわかるキングダム|第11章:鄴(ぎょう)攻略戦編(46〜60巻)

中華統一へ向け、秦が仕掛けた最大規模の遠征――それが「鄴攻略戦」。

その狙いはただ一つ。趙国の中枢、巨大都市・鄴を陥落させ、

一気に趙全体を掌握する“喉笛を掴む”戦略だった。

総大将に抜擢されたのは、寡黙にして冷徹な知将・王翦。

その配下に、左翼・桓騎、右翼・飛信隊・玉鳳隊・楽華隊という構成。

そして、もう一つの柱として戦線に投入されたのが――

山の王・楊端和率いる山の民だった。

王翦が立てた策は、一見すると大胆かつ無謀だった。

補給路を断ち、敵地のど真ん中で数十万の軍を率いて戦うという、常識では考えられない作戦。

だが王翦には、その無謀を支えるだけの綿密な計画があった。

朱海平原:総力戦の幕開け

主戦場となるのは「朱海平原」。

ここで秦軍と趙軍の大軍が正面衝突する。

趙側の総司令官は李牧。

彼の下に、歴戦の将・尭雲、知将・趙峩龍、猛将・馬南慈といった重鎮たちが揃う。

これに対する秦軍の右翼は、信の飛信隊、王賁の玉鳳隊、蒙恬の楽華隊が担う。

それぞれが千人規模から五千人規模へと拡大されたばかりの部隊であり、

将としての経験・練度ともに“試される戦”だった。

戦は開戦から熾烈を極める。

趙軍の布陣は完璧で、どこからも突破の糸口が見えない。

特に尭雲率いる部隊は、戦の空気そのものを支配し、

まるで「戦場に生きる神」のように立ちはだかる。

信は、飛信隊を率いて何度も突撃をかけるが、

ことごとく押し返され、仲間を失い、士気も下がっていく。

尭雲との邂逅、そして飛信隊の覚醒

転機となるのは、信と尭雲の一騎打ち。

尭雲は、かつて王騎とも矛を交えたことのある男であり、

「六大将軍の意志を継ぐ者にふさわしいか?」と信を試す。

信は仲間の命、王騎の矛、漂との誓い、政との夢――

すべてを背負い、血だらけになりながら立ち上がる。

この戦いで、飛信隊は真の意味で「部隊」となる。

ただの信の突撃ではなく、羌瘣の剣、河了貂の戦術、崇原や楚水の指揮。

一人ひとりが“生きる理由”を持って、隊としての機能を完成させていく。

激闘の末、信は尭雲を討ち取る。

この勝利は、飛信隊にとって初めての“大将撃破”であり、

信にとっても初めて「王騎の矛を継ぐ者」として認められた瞬間だった。

王翦の陽動と桓騎の包囲戦

一方、中央では王翦が沈黙を守りながらも、戦線の全体像を読み切っていた。

彼は李牧に対して正攻法ではなく、補給の切断と機動戦術で追い詰めていく。

王翦の狙いは、朱海平原で趙軍を引き付けている間に、

桓騎と山の民によって鄴を包囲・陥落させるという“大包囲戦略”。

このタイミングで登場するのが楊端和軍だ。

彼女は山の民を率いて、趙軍の裏を取り、補給線や退路を断ち、

さらには鄴近郊の都市・橑陽を制圧。

これによって桓騎軍の補給が可能となり、包囲戦は成立する。

桓騎のやり口は冷酷だった。

兵糧攻めにより、鄴の住民を心理的に追い詰め、

自壊を待つという、非情の戦術を取る。

鄴の中では飢えが広がり、混乱が生まれ、

最終的には内部崩壊によって開門。

桓騎はそれを逃さず、城を落とす。

勝利の代償は大きく、後味の悪い終わり方だった。

だが、戦略的には「中華統一への最大の一手」となったのは間違いない。

楊端和、王翦の“もう一つの矢”

鄴攻略戦における影の立役者――それが楊端和率いる山の民である。

朱海平原の正面戦と鄴の包囲戦、この二正面作戦を成り立たせるためには、

絶対に敵の補給線を遮断し、秦軍の補給を維持する必要があった。

それを担ったのが、山の民だった。

楊端和は、壁将軍・バジオウと共に橑陽(りょうよう)を急襲。

趙の防備を粉砕して城を制圧。ここで楊端和軍が秦の食糧集積地を確保し、

桓騎軍の兵糧維持、さらには朱海平原からの退路まで保証した。

この時点で、鄴は“戦う都市”ではなく“逃げ場のない籠城都市”と化していた。

戦術の天才・李牧でさえ、この三面包囲の戦略を完全に見切ることはできず、

鄴の救援に向かうも時すでに遅し。

そして――

「秦軍が敵地のど真ん中で、兵糧のないまま勝利した」という現実が、

この戦の異常さと王翦の恐ろしさを際立たせた。

秦国の進軍と、政の覚悟

鄴陥落の報を受けた秦王・政は、歓喜に沸く側近とは裏腹に、静かに言葉を噛み締める。

「これが中華統一のはじまりだ」

この戦いはただの勝利ではない。

“秦が中華の中心を奪いに行く”と、六国に知らしめた布石だった。

事実、この戦後、趙は鄴以南を失い、動員兵力の半数を喪失。

李牧は更迭され、趙王のもとで政治的に孤立していく。

政は、夢の中に一歩を踏み出す代償として、

大量の民の命と、戦場に散った兵たちの死を背負っていく。

信は戦場の最前線で戦いながら、

「この道の先に何があるのか」を何度も自問する。

「本当にこれが、俺たちが望んだ“国創り”なのか」――

それでも信は、王騎の矛を持って再び立ち上がる。

「これが俺の戦場だ。俺はこの矛で中華を創る」

信のこの決意が、飛信隊だけでなく、

次の戦いへ向かうすべての者の背中を押す。

戦の果てに残されたもの

この「鄴攻略戦編」は、キングダム全体の中でも最も“戦略と戦術”が交錯した章である。

王翦・李牧の知略の応酬、信と尭雲の魂のぶつかり合い、

桓騎の冷酷な兵糧攻め、楊端和の縦横無尽の突破力――

それぞれの持つ“戦”の意味が、ぶつかり、混ざり合い、

最後には「勝ったはずなのに、どこか苦い後味だけが残る」――そんな戦いだった。

だが、この勝利をもって、秦は趙の心臓部を奪い取った。

そして次の一手、「什虎攻略」「李牧の再登場」へと繋がっていく。

編集後記:ここがアツい!鄴攻略戦3つの注目ポイント

  1. 王翦の戦略の“異常性” → 補給を捨てて敵地に突入する作戦とか、正気じゃない。でも成立させるのが王翦。
  2. 信 vs 尭雲の一騎打ち → 信が本当の意味で「将軍の器」になった試金石。
  3. 楊端和の存在感 → 中央と左右が詰んでも、この人がいればなんとかなる感。 バジオウとタジフが無双してるのもポイント高い。
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この記事を書いた人

「小説家になろう」歴10年、これまでに読破した作品は200タイトル以上。少年漫画から青年漫画、ラブコメ、ギャグまで幅広く手を伸ばし、ジャンルの垣根なく楽しむ雑食系エンタメファン。毎月4本は映画館で鑑賞するほどの映画好きで、特にポケモンとワンピースへの愛は筋金入り。大人になっても心がワクワクする――そんなエンタメ作品を皆さんにお届けします。