5分でわかるキングダム|第13章:秦国侵攻編(64〜68巻)
什虎を落としても、秦に安息の時は訪れなかった。
というか、完全に油断していた。
鄴を攻略し、什虎も押さえて、「さあいよいよ次は趙の本丸へ!」というムードの中で、やつが戻ってきた。
李牧――
この名を聞いて読者の背筋がゾワッとしたのは俺だけじゃないはず。
朱海平原で致命的な敗北を喫し、失脚したかに思われた李牧が、再び趙の宰相として復活。
しかもただの復活じゃない。
なんと、今度は攻めてくる側として、秦の領土を狙ってくる。
信も蒙恬も王賁も、そして王翦も桓騎も、全員が“攻める側”として士気を上げてる最中、まさかの「守る戦」。
これがどれだけ苦しいかは、合従軍戦で痛いほど経験済み。
李牧は、秦の防衛が手薄になる瞬間を狙ってきた。
まさにその一手に、秦の中枢は動揺する。
目的は明確、狙いは「橑陽(りょうよう)」と「太原(たいげん)」。
この二都市を抜かれれば、秦の中原地帯が敵に切り裂かれることになる。
つまり、国家存亡レベルの侵攻だった。
迎え撃つのは、あの楊端和(ようたんわ)。
久々の登場なのに、いきなり全責任を背負わされるというハードモード展開。
彼女は山の民を率い、橑陽を守り抜くために戦線に立つ。
これまでの戦いでは異民族の精鋭として“圧倒的な戦力”で描かれていた山の民だけど、今回ばかりはそう簡単にいかない。
敵は李牧。
しかも趙だけじゃない。
なんと、魏・韓までもが共謀し、三国連合による“対秦侵攻”が成立してしまう。
李牧の恐ろしさは、戦術だけじゃない。
政治力、戦略構想、すべてが一級品。
その手腕がここにきて存分に発揮された。
橑陽の戦いでは、楊端和が命を賭けて時間を稼ぎ、王翦軍と連携してなんとか持ちこたえる。
山の民たちの奮戦は、まさに“誇りをかけた戦い”だった。
特にバジオウの戦いぶりは凄まじく、まさに獣。
武将同士のタイマンだけじゃなく、部族全体の戦闘の美学が感じられるシーンも多くて、この章は地味に“山の民回”としての魅力も詰まっていた。
一方で、李牧の策はまだ続く。
太原方面には、別動隊が侵入。
このルートが抜かれると、秦王都の咸陽まで危うくなる事態。
この超側の飛矢としての役割を担うのが…まさかのカイネと傅抵(ふてい)という李牧側側近の若手コンビ。
傅抵って、あのチャラ男風な口調からは想像できないキレ味で動くから侮れない。
カイネは、李牧を守るために剣を抜く覚悟を固めていて、その成長も地味に描かれてくる。
全体的にこの章は、“守る戦い”の難しさと、李牧の復活による不気味な緊張感がずっと漂ってる。
誰が主役というわけじゃない。
秦全体が“守る”ために全力を尽くしてるのが伝わってくる。
しかも、趙・韓・魏が連携してくるって展開が地味にヤバい。
これまで、各国は基本的に“自国優先”だったのに、ここにきて「秦を止めなきゃマジで全部飲まれる」って危機感が連帯を生んでる。
李牧の本質って、やっぱりそこだと思う。
国を超えて、恐れられる存在。
そしてこの章の最後、李牧は言う。
「次は桓騎を討つ」。
まるで宣告のような一言。
読者はこの時点で、次に待ち受けている“因縁の決着”を感じ取る。
桓騎 vs 李牧――
この二人の戦いが、ただの戦場のぶつかり合いで終わるはずがない。
策略と狂気、冷徹と激情、すべてを背負った将軍たちの激突が始まろうとしている。
次章、朱摩(じゅま)平原――死地へ向かう桓騎と信、そして李牧との決戦へ。
歴史の歯車が、再び大きく回り出す。