5分でわかるキングダム|第7章:屯留の戦い編(34〜35巻)
合従軍を退け、中華統一へと再び歩みを進める秦。
だがその矢先、思わぬところから内乱の火種が再び持ち上がる。
反旗を翻したのは、かつて王位を争った政の異母弟・成蟜だった。
舞台は、秦国南部の都市「屯留(とんりゅう)」。
ここで成蟜は、地方軍閥と結託して“再び王位を奪う”ための兵を挙げる。
かつて政に敗れ、幽閉されていたはずの男が、なぜ再び立ち上がったのか――
その背後には、再び呂不韋の影がちらついていた。
この戦いに送り出されるのが、壁将軍と信。
政は、この乱をただの反乱とは見ていなかった。
「中華を統一する」という夢の前に、国内の“芯”を整える最後の闘いでもあった。
戦場に着いた飛信隊が目にしたのは、信じがたい光景だった。
成蟜軍に組み込まれた兵士たちは、命じられるままに反乱に加担していただけ。
抵抗すれば殺される――そんな恐怖に縛られた者たちの集まりだった。
信は剣を抜く。けれど、それは民を斬るためではない。
「間違った王には従うな」と叫びながら、民兵の中に飛び込む。
彼の言葉は、敵兵の中にいた“かつての兵士”たちの心を揺らしていく。
一方、成蟜は重傷を負い、深手を抱えながらも部下の裏切りに気づきはじめる。
信じていた配下が、実は呂不韋側の刺客だった――
追い詰められた成蟜は、逃げることなく、自ら兵を率いて最後の突撃をかける。
「私は、政の弟だ。
あの男が王になる国ならば……私は、それを託せる」
かつては自ら王になろうとした男が、最期の瞬間に“兄の王道”を認めた。
成蟜は、潔く、そして誇りを持って戦場に散った。
この乱を通じて信は、「ただ戦うだけではなく、人を救う」ことの意味を知る。
飛信隊も、より広く“守るべきもの”を自覚していく転機を迎える。
そして政も、弟の死に対して一言も涙を見せなかった。
だが、心の奥底では彼の最期をしっかりと受け止めていた――
それが“王として生きる者”の覚悟だった。