5分でわかるキングダム|第8章:著雍攻防戦編(35〜37巻)
中華統一という遠い目標のために、秦はまた一つ前へと進む。
次なる戦場は「著雍(ちょよう)」。
魏と秦の国境に位置するこの要衝を奪うため、秦軍はふたたび動き出す。
総大将は騰(とう)。かつて王騎の副官として冷静沈着に戦場を駆け抜けた名将だ。
その副将として抜擢されたのが、千人将となった信と、王賁・蒙恬という三人の若き将。
彼らはそれぞれに異なる戦い方と信念を持ちながら、同じ戦場を駆ける“新世代の三本柱”として、ここで再集結する。
著雍を守る魏軍の中心には、老将・凱孟(がいもう)と、知略に長けた軍師・荀早(じゅんそう)がいた。
武と策の二枚看板を前に、秦軍は一筋縄ではいかない攻防戦を強いられる。
信率いる飛信隊は、初の「独立した部隊」として、正面からの突撃を命じられる。
だが敵の守りは固く、突破の糸口が掴めない。
信は焦りながらも、隊の動きを見直し、部下の言葉に耳を傾けるようになる。
「お前が背中を見せてくれるから、俺たちは前に出られるんだ」
仲間の声に支えられながら、信は突撃の形を微調整し、局地的な勝利を積み上げていく。
正攻法ではなく、仲間との連携や臨機応変な指揮で“戦場を読む力”を磨き始めていた。
一方、王賁は冷静に敵の配置を読み、蒙恬は柔らかな指揮で部下の士気を巧みに保ち、
三者三様のやり方で、それぞれが結果を出していく。
この著雍の戦いは、単なる領土争いではなく、
「次代の将たちが、どう未来に踏み出すか」が問われる戦でもあった。
最終局面、騰将軍が自ら動く。
一度の突撃で敵陣を切り裂くその一撃は、まさに王騎の系譜を継ぐ“将の仕事”。
その背中を、信たちは確かに見ていた。
著雍は、秦の勝利に終わる。
信は正式に「三千人将」となり、飛信隊も規模と士気の両面で大きく成長を遂げる。
この戦で、信・王賁・蒙恬の“ライバル関係”はより明確なものとなる。
互いを意識し、超えるべき壁として認め合う関係――
それは、時にぶつかり合い、時に助け合う、不思議な距離感でもあった。
王騎が去り、騰が引き継ぎ、そして信たちが現れる。
「世代交代」という言葉では語りきれない、命と意志の継承がここにはある。