5分でわかるキングダム|第9章:毐国動乱編(37〜40巻)
中華統一を目指す政にとって、最大の障壁は外敵ではなく、
自国の中に巣食う“もう一つの王権”だった――
それが「毐国動乱」であり、政という王が“真の王”になるための最後の壁となる事件である。
秦国内には、太后とその側近・嫪毐(ろうあい)によってつくられた“もう一つの国”が存在していた。
それが「毐国」。表向きは王室の一部だが、実態は独立した軍と土地を持つ準国家。
しかもそこに、かつての権力者・呂不韋の影が絡み、
「裏から秦を支配し直そう」という動きが密かに進められていた。
そしてついに、その火種が爆発する。
嫪毐が反旗を翻し、王都・咸陽に向けて兵を進める――
これが、政と太后、そして秦そのものを揺るがす内乱の幕開けだった。
政は王として、この戦いに正面から立ち向かう。
「身内である太后と戦うこと」がどれほど重い選択か、誰よりも彼がわかっていた。
だが、それでも「中華統一」を成し遂げるには、避けては通れない戦いだった。
嫪毐軍は数で勝るものの、指揮系統は脆く、政軍の統制力に押されていく。
信と飛信隊も再び前線に立ち、嫪毐軍の要を突いて戦局を崩す。
戦場では、羌瘣が久しぶりに戦列に戻り、仲間たちと共に攻め上がる姿も描かれる。
一方で、最も注目すべきは太后の心の揺れだった。
かつて政を見捨て、嫪毐との関係に溺れた彼女が、
息子の覚悟と目の強さを見て、何を思うのか。
「お前は、変わったな。あの頃とは、まるで別人だ」
太后がそう呟いた瞬間、政はすでに“王”を超え、“中華の主”となる器を備えつつあった。
嫪毐は敗北し、処刑される。太后は幽閉。
呂不韋は失脚し、秦の政治の中心から完全に退場することとなる。
この内乱を経て、政はようやく「真の王」として国内に君臨する。
かつては脆弱だった王権が、この動乱を乗り越えることで“揺るぎない礎”となっていく。
信もまたこの戦を通じて、ただの戦士ではなく「国を背負う意志」の重さを知る。
そして羌瘣の復帰によって、飛信隊はかつての勢いを取り戻し、さらなる高みへと進む準備を整える。
この毐国動乱編は、血の戦いであると同時に、“心の戦い”でもあった。
過去と決別し、理想を掴みにいく――
王・政の物語が、ここにひとつの完成を迎える。