第一章:Ordeal of Rookie
アルター王国のフィールドで、初心者マスターを狙う同時多発PKが発生。
装備も経験も浅いレイは、レベル上げの最中に謎のPKに一方的に倒されてしまう。
はじめて味わう“プレイヤー死亡の喪失”——経験値や時間ではなく、自尊心が抉られる。
復讐衝動に駆られる一方で、彼は冷静に「なぜ負けたか」を分解する。
装備の質、位置取り、撤退判断、そして何より情報不足。
そこでレイは、兄やマリーからビルド指針と索敵の基礎を叩き込み、弱点を潰しにかかる。
……が、雪辱戦の舞台はあっけなく消えた。
王国を包囲していたPK群は、四人の<超級>により一掃されたのだ。
個の努力では届かない階層の存在を前に、レイは“世界の天井”を知る。
落胆ではなく、目標が生まれた。
「いつか、守りたいときに守れる力を」
悔しさを燃料に基礎を積む期間——視界に入るものすべてが経験値だ。
負けを起点に、レイの戦い方は“勝つための最短”から“守り切るための最適”へと舵を切る。
この転換が、後の大事件で命運を分けることになる。
第二章:不死の獣たち
決闘都市ギデオン周辺で、子どもを攫うゴゥズメイズ山賊団の情報が浮上。
拠点は堅牢、戦力は多層。
さらに相手は“再起動”めいた復活挙動で粘る。
単発火力では押し切れず、再生条件を上回る連続与ダメか核条件の破壊が鍵になる。
レイは異国ドライフ皇国のマスター、【高位操縦士】ユーゴーとそのエンブリオであるキューコと共闘。
国家を跨ぐ連携に躊躇はない。
目的は一致している——子どもを無事に連れ帰ること。
事前に役割分担(拘束/撹乱/核露出)を定め、夜間に奇襲。
レイはネメシスの打撃を“連撃の線”に束ねて再生を上回るDPSを確保、ユーゴーは機体運用で制空・制圧、キューコが要所でデバフを刺す。
崩落する廊下、泣き叫ぶ子ども、時間切れのカウント。
焦燥のなかで決まった会心の一撃が核に届き、再生ループは破断。
救出は成功した。
だが、ティアンの涙は消えない。
ここでレイは確信する。
「勝利=誰かが生きて帰ること」
数値の達成より、帰還の結果を優先する彼のプレイ哲学が、はっきり輪郭を持った瞬間だった。
第三章:<超級激突>
ギデオン——決闘を誇るこの都市で、ついに超級と超級が正面衝突する。
王国三巨頭“無限連鎖”【超闘士】フィガロに挑むのは、黄河帝国の決闘ランキング二位、“応龍”【尸解仙】迅羽。
迅羽は「フィガロが膝をつくまで一歩も動かない」と宣言し、理不尽なまでの受けの妙で圧をかけ続ける。
戦場が沈黙の緊張で満たされ、観衆は呼吸を忘れる。
レイは観客席で“格の違い”を目に刻む——地形、呼吸、間合い、全てが資源だ。
決着は、街の景色を塗り替える一閃。
だが歓声は長く続かない。
ドライフ皇国の<超級>、“最弱最悪”【大教授】Mr.フランクリンが企てた“醜悪なゲーム”が幕を開け、さらに世界の底に蠢いていた正体不明が姿を現す。
絶望を越えた先に、さらに濃い絶望が連なっている——それが“超級階層が触れる現実”。
レイは戦場の端で誓う。
「いつか、この余波で人が死なないようにする」
この誓いは、後の大戦で彼の行動原理を縛り、そして救う。