第三章:剣と魔法、そして仲間との出会い
幼少期を過ぎ、ルーデウスは成長とともに周囲の世界をより広く知っていく。父パウロとの稽古で培った剣術は彼の身体能力を確実に底上げし、幼馴染のシルフィとの交流によって芽生えた友情は、彼にとってかけがえのない絆となる。しかし、ルーデウスの人生をさらに大きく変えていくのは「新たな仲間」との出会いだった。
ルーデウスが10歳を迎える頃、両親の意向で彼は「家庭教師として雇われる」ことになる。その生徒こそ、後に彼の人生に深く関わるエリス・ボレアス・グレイラットであった。エリスはボレアス家という地方領主の娘で、気性の荒い暴れん坊。剣術は得意だが、勉強や礼儀はまったく身についていない。最初の出会いこそ、互いの相性の悪さが爆発し、エリスの鉄拳制裁でルーデウスが吹き飛ぶような有様だった。それでもルーデウスは「ここで逃げては前世と同じ」と自らを奮い立たせ、彼女を導こうと必死に努力する。
その過程で、ルーデウスは教師としてだけでなく、人としても成長していく。前世での失敗や臆病さを繰り返さないために、彼は真正面からエリスに向き合い、ときに魔術を使った奇策で彼女を楽しませ、ときに剣術で彼女と対等に渡り合う。暴力と誇りに彩られた少女エリスと、知識とユーモアで彼女をリードするルーデウス。その奇妙な関係は、いつしか「主従」を超えて「対等な仲間」へと変わっていく。
エリスとの交流は、ルーデウスに「自分が誰かを支えられる存在になれる」という自信を与えた。そしてその先には、彼の人生を決定的に動かす大事件が待ち構えていた。後に「フィットア領転移事件」と呼ばれる未曾有の災厄である。
突如として空から降り注いだ光の奔流は、ルーデウスとエリスを故郷から遠く離れた魔大陸へと飛ばす。気づけば、彼らは魔族の地で生き延びるために共に歩み出すしかなくなっていた。ここで登場するのが、魔族の戦士ルイジェルド・スーパルディアだ。緑髪と赤い宝石の額を持つ彼は、人々から「魔族の殺戮者」と恐れられる存在だったが、実際は誇り高く、子どもに優しい人格者であった。
ルーデウスはルイジェルドと契約を結び、魔大陸横断の旅を始める。この旅は、単なるサバイバルではなく「信頼とは何か」「差別をどう超えるか」「仲間との信頼はどう築かれるか」というテーマに直面する旅路でもあった。ルイジェルドは自らの一族が負った誤解と呪いを背負いながらも、ルーデウスとエリスを守る。その姿にルーデウスは敬意を抱き、彼から「男としての在り方」を学んでいく。
こうして、エリス、ルイジェルド、そしてルーデウスの三人は、共に戦い、共に笑い、共に困難を乗り越える旅路を歩む。ルーデウスにとってそれは、前世では得られなかった「仲間と共にある人生」の始まりだった。彼は次第に、ただ「本気で生きる」という言葉を掲げるだけではなく、実際に「誰かと共に生きる」という意味を理解していく。
やがて旅の果てに、彼らは自らの運命と再び向き合うことになる。ルーデウスにとってこの時期は、ただの冒険譚ではなく、自分自身の弱さを克服し、他者と心を通わせることで「大人」へと近づいていく過程そのものだったのだ。