第1章:リムル誕生編(転生〜ジュラ=テンペスト建国)
突然の通り魔に刺されて命を落とした三上悟は、気づくと真っ暗な世界で「スライム」として目を覚ます。
痛覚もなく、視覚もない不思議な状況の中で彼が手にしたのは、ユニークスキル《大賢者》と《捕食者》。
この2つの能力は彼の今後を決定づける“核”となる。
最初はスライムとして水を飲み、魔素を吸収し、草を食べてスキルを取得しながら、異世界に順応していく。
この時点で既に「最弱」なスライムという定説は覆され始めており、リムルは着実に“異常”な存在へと進化していく。
そんなある日、巨大な洞窟の奥で彼が出会ったのが“暴風竜ヴェルドラ”。
災厄級モンスターでありながら、300年前に人間の勇者に封印され、孤独に苛まれていた存在だった。
意気投合したリムルは、ヴェルドラを《捕食者》で自分の中に取り込み、分析・解放することを約束する。
この友情の証として、リムルは「ヴェルドラ=テンペスト」の名を受け継ぎ、「リムル=テンペスト」を名乗るようになる。
この命名には大きな意味がある。
名前を得た魔物は進化するのだ。
後にリムルが多くの魔物に名前を与えることが、国づくりの基盤となる。
リムルは洞窟を脱出し、外の世界へ。
そこで最初に出会ったのが、ゴブリンたちだった。
彼らは牙狼族(ファングウルフ)に襲われ、滅亡寸前だった。
リムルは“頼れる存在”としてゴブリンたちに請われ、牙狼族との戦いに臨む。
この戦闘で、リムルは初めて《水刃》などの攻撃スキルを駆使し、リーダー格のファングウルフを撃破。
生き残った牙狼たちを従わせ、ゴブリンたちに新たな“力”と“誇り”を与える。
さらにリムルは彼らに名前を与え、部族ごと進化させた。
これが、のちの“ジュラ=テンペスト連邦国”のはじまりである。
ここから先、オーガ族(のちの鬼人)との出会い、ドワルゴン王国(ドワーフの国)への訪問、魔物同士の同盟交渉などが続き、リムルの“国づくり”は本格化していく。
特にドワルゴンでは、リムルが無実の罪で裁かれるも、国王ガゼル・ドワルゴによってその手腕を認められ、正式な交易関係を築くことに成功。
この時点で既に、魔物のリーダーという枠を超えた“外交官”としての資質を見せている。
この章でのリムルの成長ポイントは大きく3つある:
- スライムという存在の限界を突破し、戦闘・指導者・外交官としての能力を見せ始めたこと
- ヴェルドラとの出会いにより、リムルの中に“物語の核”が芽生えたこと
- 名前を与え進化させるという行為を通じて、“魔物たちの新たな秩序”を築き始めたこと
まさに「異世界転生もの」の王道でありながら、
ここまで破綻なく論理的に、そして感情的にも共感できる成り上がりを描けているのは、作者・伏瀬氏の構成力の妙だろう。
次回は「第2章:国家建設編(鬼人との出会い〜オークロード討伐)」をお届けします。
リムルが“国王”として本格的に動き出し、より大きな敵と理想に向き合うことになります。